2020年の春。オフィスに通うのが当たり前だった私が、「在宅勤務」という新しい働き方を始めました。
当時私は、ITシステムの開発職で、労働時間に縛られない裁量労働制のもと働いていました。いわゆるベンチャー企業で、Slackなどチャットベースのやり取りが中心。非同期コミュニケーションが当たり前のように機能している職場でした。
実はその頃、会社にはすでに「在宅勤務制度」がありました。ただ、制度としてはあっても、誰も利用していない。そんな状態でした。
その流れを変えたのが、当時の部長の一言でした。
「まずは週1からでいい。制度を“使う文化”に変えていこう。」
その強い後押しによって、私の在宅勤務は週1日の「お試し」から始まりました。
ただ、環境が整っていても、実際に在宅で働くのは思っていたより難しかったのが正直なところ。
自由であることは、裏を返せば“すべて自分次第”ということでもありました。
このストーリーでは、そんな私の在宅勤務の始まりと、最初に直面した「つまずき」を、リアルに綴っていきます。
きっかけは「週1」の実験的なリモート勤務
在宅勤務が今のように当たり前になる前、私の職場では「制度はあるけど誰も使っていない」という状態でした。
そんな中で始まったのが、「まずは週1からやってみよう」という部長のひと声によるリモートワークの試験導入です。
ここから、私の在宅勤務ライフが少しずつ動き出しました。
在宅制度は「あるけど使われていない」状態
私が働いていたのは、社員数十名ほどのベンチャー系IT企業でした。実はその会社には、在宅勤務制度がすでに存在していました。ただし“制度としてはある”だけで、実際に使っている人はゼロ。チーム内でも「制度はあるけど、使いづらいよね」といった雰囲気があり、誰も最初の一歩を踏み出していなかったのです。
誰も前例がない状況では、「制度があっても、使えない」のと同じです。実際、私自身も制度の存在は知っていましたが、「本当に使ってもいいのかな…」と様子をうかがっていた一人でした。
変化のきっかけは、部長のひと声
そんな空気を一変させたのは、ある日の部長の一言でした。
「制度があるのに使わないのは、もったいない。まずは週1からでいい。制度を“使う文化”に変えていこう。」
その言葉をきっかけに、部署内で「とりあえずやってみよう」という流れが生まれました。形式ばらず、実験的に「週に1度だけ自宅で働いてみよう」という方針が打ち出されたのです。私も「これを逃すと、二度と在宅勤務は始められないかもしれない」と思い、すぐに乗りました。
IT企業×裁量労働×チャット文化の下地
私の職種は、システム開発。エンジニアとしての業務は、仕様を詰め、コードを書き、テスト。問題が発生すればリカバリー対応と原因調査、対策。もともと1日の仕事の進め方は個人に任されており、裁量労働制が採用されていました。
また、社内ではSlackやチャットツールを使った非同期コミュニケーションが日常的に行われていました。そのため「オフィスにいなくても、やりとりが成立する」文化は、すでに根付いていたと言えます。
だからこそ、「試しに週1リモートでやってみよう」という動きが、比較的スムーズに始まったのだと思います。
最初にぶつかった「オンオフの切り替え問題」
リモート勤務が始まり、通勤がなくなったことで時間にも気持ちにもゆとりが生まれる…はずでした。
ところが実際には、「自由すぎて逆に切り替えができない」という新たな悩みにぶつかりました。
起きる時間も服装も“自由”すぎた
最初の頃は、目覚ましをかけずに自然に起きて、パジャマのままパソコンを開くことも。
「この方がリラックスして仕事ができる」と思っていたものの、どうも朝からエンジンがかからない。
それまで通勤や身支度という「朝の準備ルーティン」が、気持ちを切り替えるスイッチになっていたことに気づいたのは、しばらく経ってからのことです。
「仕事が始まらない」朝のモヤモヤ
出社していれば、オフィスに着く=仕事が始まる。そんな物理的な区切りが、在宅にはありません。
「まだ始めなくてもいいかな」「あと5分だけ」と先延ばしにしてしまい、気づけば午前中が終わっていた…という日も。
このままではまずいと感じて、私は「仕事開始前のルーティン」を意識的に作るようになりました。
試行錯誤の末に見えてきた“在宅のコツ”
在宅勤務には、自由さと同時に「自分を律する力」が求められます。
最初はうまくいかなくても、少しずつ工夫を重ねていく中で、私なりの“在宅でも集中できる働き方”が見えてきました。
「ルーティン」が集中力を生む
毎朝決まった時間に起きて、軽くストレッチをして、コーヒーを入れてデスクに向かう。
たったこれだけの流れですが、「よし、今から仕事だ」というスイッチが自然に入るようになりました。
この“自分だけのルーティン”ができたことで、集中までの時間がグッと短くなったのです。
家の中でも“仕事モード”に切り替える工夫
部屋着ではなく、ちょっとラフなオフィスカジュアルに着替える。
座る場所を「仕事用スペース」に決めて、デスク周りを整える。
ヘッドホンをつけて“外界シャットアウトモード”に入る。
こういった小さな工夫の積み重ねが、「今日はなんとなくやる気が出ない…」という日でも、意外と力になってくれます。
在宅勤務から得たもの、そして今
最初は戸惑いながら始めた在宅勤務も、気づけば私の働き方の“当たり前”になっていました。
ただ仕事の場所が変わっただけではありません。
7年間の在宅勤務を通して、私は「働き方」だけでなく、「生き方」そのものに大きな変化を感じるようになりました。
時間・体力・メンタルの「余白」
毎日の通勤がなくなり、満員電車に揺られることもなくなりました。
そのぶん、朝にゆっくりコーヒーを淹れる時間ができ、昼には一息ついてストレッチをする余裕も生まれました。
体力的な疲れが減っただけでなく、「今日もちゃんと自分のペースで過ごせた」という小さな安心感が、気持ちにも余白をくれたのです。
働き方が変われば、生き方も変わる
自由に働ける分、自分で時間を使う責任も増えます。
最初はそのバランスに戸惑いましたが、「どう働くか」「どう暮らしたいか」を自分で決められるようになった今、
私は“生き方をデザインする感覚”を、在宅勤務を通じて手に入れたと感じています。
そして今は、その経験を活かして、在宅ワークに挑戦する人を応援する活動をこのブログで始めています。